建設業許可の承継(事業譲渡・合併・分割・相続) 許可を切らさずに引き継ぐ方法

会社や事業を譲るとき、建設業許可はどうなるのか。株式を譲る方法なら許可は会社に残り、事業譲渡・合併・会社分割・相続では、2020年10月から認可を受けることで許可を切らさずに引き継げるようになりました。形ごとの手続きと、つまずきやすい条件をまとめます。
承継の形ごとに、許可はどうなるか
| 承継の形 | 許可の扱い | 手続き | 時期 |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡(株主が変わる) | 会社に残る。認可は不要 | 役員が変われば変更届(30日以内)。常勤役員等・営業所技術者が替われば届出(2週間以内) | 要件を満たす人が途切れると、許可の取消しの対象 |
| 事業譲渡(個人から法人への法人成りを含む) | あらかじめ認可を受ければ、譲渡の日に譲り受けた側が引き継ぐ | 譲渡人と譲受人が認可を申請 | 譲渡の前(大臣許可・関東地方整備局の例では承継予定日の90日前まで) |
| 合併 | あらかじめ認可を受ければ、合併の日に存続会社(新設会社)が引き継ぐ | 合併の当事者が認可を申請 | 合併の前 |
| 会社分割(建設業の全部を承継) | あらかじめ認可を受ければ、分割の日に承継会社が引き継ぐ | 分割の当事者が認可を申請 | 分割の前 |
| 相続(個人事業主の死亡) | 認可を受ければ、相続人が引き継ぐ | 相続人(複数いる場合は全員の同意で選んだ1人)が申請 | 死亡後30日以内 |
2020年10月から何が変わったか
以前は、事業譲渡や合併をすると、譲った側の許可を廃業し、引き継ぐ側があらためて新規に申請する必要がありました。新しい許可が出るまでの間は、500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事を請けられない「空白の期間」が生じていました。
2020年10月1日に施行された改正建設業法で、事業譲渡・合併・会社分割は「あらかじめ」認可を受けること、相続は死亡後30日以内に認可を申請することで、建設業者としての地位をそのまま引き継げるようになりました(建設業法第17条の2・第17条の3)。
認可を受けるための条件
- 許可を受けた建設業の全部を引き継ぐ:一部の業種だけを引き継ぐことはできません。引き継がない業種は、承継の日より前に一部廃業の届出をします。
- 一般と特定の食い違いに注意:同じ業種で、渡す側が一般・受ける側が特定(またはその逆)の場合は、その業種を承継できません。承継の日より前に、どちらかの一部廃業が必要です。違う業種どうしなら承継できます。
- 引き継ぐ側が許可の要件を満たす:承継の日の時点で、常勤役員等(経営経験)・営業所技術者・お金の要件・欠格要件・社会保険の要件を満たしている必要があります。
- 営業所技術者が引き続き常勤:承継される業種ごとに、承継予定日に原則として同じ営業所技術者が引き続き常勤している必要があります(関東地方整備局の手引)。
- 決算報告などの引き継ぎ:引き継ぐ側は、渡す側が出していない決算報告(決算変更届)を出す義務を負います。渡す側が受けた監督処分や経営事項審査の結果も引き継ぎます。
- 申請先:渡す側が大臣許可なら国土交通大臣。知事許可なら同じ知事ですが、引き継ぐ側が大臣許可やほかの都道府県の知事許可を持っている場合は国土交通大臣です。
手続きの流れと時期
- 許可行政庁に事前相談をする
- 認可を申請する(大臣許可・関東地方整備局の例では承継予定日の90日前まで、標準処理期間90日。知事許可の受付期間は都道府県の手引で確かめます)
- 認可の通知を受ける
- 承継の日(譲渡・合併・分割の効力が生じる日)を迎える
- 認可の条件として後から出す書類を提出する
- 認可の手数料は、関東地方整備局の例ではかかりません。
- 東京都は、電子申請システム(JCIP)での事業承継等の認可申請には対応していません(東京都の手引)。窓口か郵送で申請します。
- 予定日に承継が行われない場合や、後から出す書類が出ない場合は、認可の拒否や取消しになることがあります。
承継のあとの有効期間
- 事業譲渡・合併・分割で引き継いだ許可は、承継の日の翌日から5年です(関東地方整備局の手引では、承継の日を含めて5年と1日)。引き継ぐ側がもともと持っていた許可も、同じく承継の日の翌日から数え直します。
- 相続で引き継いだ許可は、承継の日の翌日から5年です。
- 大臣許可の会社が知事許可の会社の地位を引き継ぐ場合などは、承継の日に大臣許可を受けたものとみなされます。
株式譲渡のときに気をつけること
株式を譲る方法では会社そのものが変わらないため、認可は要りません。ただし、社長が常勤役員等や営業所技術者を兼ねていて退任すると、代わりの人がいなければ許可の要件を満たさなくなり、許可の取消しの対象になります(建設業法第29条)。代わりの人がいる場合は2週間以内に届け出ます。社長に一定の期間役員として残ってもらうか、買い手側から要件を満たす人を送るかを、最終契約の前に決めておきます。
相続のとき
個人事業主の建設業者が亡くなったときは、相続人が30日以内に認可を申請します。申請している間は、亡くなった方の許可が相続人に対するものとみなされます。申請しなかった場合は、相続人が30日以内に廃業の届出をします。認可を受けるには、相続人が許可の要件(経営経験・営業所技術者など)を満たしている必要があります。
よくある質問
認可の申請に手数料はかかりますか?
関東地方整備局(大臣許可)の例では、認可の手数料はかかりません。知事許可は都道府県の手引で確かめてください。書類の作成を行政書士に頼む場合は、報酬がかかります。
一部の業種だけを譲ることはできますか?
できません。許可を受けた建設業の全部を引き継ぐ必要があります。引き継がない業種は、承継の日より前に一部廃業の届出をします。
個人事業主から法人にするときも使えますか?
使えます。個人の事業を法人に譲る「事業譲渡」として、あらかじめ認可を受ければ、許可を法人に引き継げます。認可を受けずに法人を作ると、法人で新規の申請が必要になります。
株式を譲るときも認可が要りますか?
要りません。会社そのものが変わらないため、許可は会社に残ります。役員や営業所技術者が替わる場合の届出と、要件を満たす人が途切れないことに注意してください。
